ダークナイト ライジング

過去2作品の伏線がすべてこの作品で集約され、ダークナイト=闇の騎士のレジェンドはここに完結した。おそらく…そのはず。
前作のジョーカーのイメージがあまりに強く、正直ベインというキャラクターがどこまで際立つのか、まして、全シリーズの「Mrフリーズの逆襲」のイメージもあったりなんで心配だったが、オープニングからなかなかの活躍ぶりで安心。だんだんとゴッサムを手中に収めていく過程はなかなかのものなのだが、なぜ彼がゴッサムやバットマンに執着心を抱くのかがちょっと希薄な気がして、ややじれったさも。いや、それは贅沢な印象で、もちろん終始面白かった訳なんだが。しかし、それも実は演出だったのかと。終盤の思わぬどんでん返しから全てがスッキリと霧が晴れたようになりましたそうか、そういうことだったのね。ベインもそういう意味では哀しいキャラクターだったのだと。で、ドンドンとテンポを上げて一気にクライマックスへ。ゴッサムの壊滅は免れて、代わりに大きな代償が…。
さて、バットマンは他のスーパーヒーローのように宇宙人だったりミュータントだったり、特殊の応力を持っているわけではないということを、今作でも改めて描いてます。そう、少しの財力と肉体的な鍛錬、そして強靱な精神力によって成り立っているのだと。地下牢を脱走するために彼が必要としたのは、筋肉ではなく精神力だったわけで。そこがね、バットマンのテーマでしょう。
そして、もう一つのテーマは正義。正義を成すということはどういうことなのか。大きな闇を葬るには、うわべの法を超えた、法ではない正義、闇の力を使わなければならない。マスクに象徴されるアイコンとしての闇の正義の力。これを成すことが、どれほど大きな精神力を必要とするか。強靱な力は肉体でなく精神にこそ必要であると。それがテーマですなぁ。
バットマンを失ったゴッサムのその後を、ラストでのいくつかの描写で説明しているのだが、ここもやはり見ものかと。”バット”の自動操縦システムが、ブルースによって完成されていたこと。修復されたバットシグナルの前に立つゴードン。ブレイクが「ロビン」と呼ばれるところ。アルフレッドが観た光景。そして、ブレイクがバットケイブに侵入する…。ゴッサムが再び強大な悪に蹂躙されたとき、三度ダークナイトは現れるはずだ、今度はサイドキックとともに、と観客に強く印象づけて幕を閉じるところは、さすがクリストファー・ノーランだなぁと。
骨太のドラマを観た。素晴らしい作品。最高の賛辞を送りたい。

「ダークナイト ライジング」(原題:The Dark Knight Rises) 12米 監督:クリストファー・ノーラン CAST:クリスチャン・ベール、マイケル・ケイン、トム・ハーディ、ゲイリー・オールドマン、アン・ハサウェイ、モーガン・フリーマン