GODZILLA ゴジラ

『ゴジラ FINAL WARS』から10年。ついにこの日は来た。新作のゴジラを観ることができる、この嬉しさ。しかしながらそこには一抹の不安。何といっても、今回のゴジラはハリウッド映画。ハリウッド版というと、あのエメリッヒゴジラをどうしても思い出してしまう。しかし、この10年の間には日本では震災があり、直接的に放射能、核兵器、海から現れる大怪獣を描く映画を制作するのは難しいのも事実。

監督は弱冠39歳のギャレス・エドワーズという聞いたことのない人間。そして、事前に出てきた情報での新怪獣ムートーの微妙なソフビの造形。そもそも主役のゴジラのデザインもこれでいいのか、とか…。挙げ始めるときりがない不安。そして、それに対して予告を見る限りでは非常にいい雰囲気のトーン。ま、とにかく観なきゃということ。


実際にはその不安なんかみじんもなく消し飛んでしまうほどの素晴らしい作品だった。これは王道の怪獣映画であり、まさしく我々が子供のころから親しんできた「ゴジラ」そのものである。ギャレスはこれまでのゴジラ映画をすべて丹念に見たのだろう。なぜなら、この映画にはこれまでの様々なゴジラ映画のエッセンスがバランスよく配されているからだ。もちろん、1954年版のイメージが一番大きい。核、放射能のイメージ。しかし、このゴジラは核兵器の申し子ではない。自然界の頂点に君臨する神にも等しい生物。そして、プロレスとも称される怪獣との戦い。これはゴジラ映画には欠かせないイメージである。そして大都市の破壊。それに翻弄されながらも必死に戦う人間たち。こういったものだ。ギャレスはこれらを、かつてのゴジラ映画のどの作品よりもうまく、そしてよりリアルに盛り込むことで、骨太でリアリティがあり、かつきちんとエンタテイメントしている作品に仕上げた。

親子の絆という部分を人間ドラマの主軸に置いて一本筋を通し、主人公の行動原理にブレを作らない。怪獣もまた、その行動にはちゃんと意味があり、あまつさえ人間味や感情を感じさせるような描写もしている。ムートーも人間も、その種をこの地球上で残すために必死に戦っている。が、どう見てもムートーが圧倒的有利。人間が手を出した原子力によって、これまでの休戦状態が終わったわけだ。そして、ここで眠れる荒ぶる神、ゴジラが登場。この地球の生態系のバランスを保つためにゴジラは戦う。

ゴジラが登場するまで1時間。2時間ほどの映画の半分で、やっと登場するというその演出はいい。つまり、デウス・エクス・マキナとしてのゴジラが、今作のゴジラなのだろう。

ラストのサンフランシスコの戦いは、手に汗握る巨大怪獣戦。まさに子供のころに見た怪獣プロレスのリアル版である。いつ出すのかと思われたあのアトミック・ブレスもここ!というところで出すしね。まさにすっきりする。死んだと思われたゴジラも、お約束でちゃんと再び立ち上がり海に帰っていく。この海に帰っていくという部分、大事。ゴジラ映画のラストシーンはいつもこうだから。

久しぶりに、本当に短く思える2時間を過ごした。間違いなく、過去のゴジラ映画の中でもベスト3に入る作品だといえるだろう。これでは、続編に期待しないわけがない。

トクサツ

Posted by MAX