introduction
男は風を切り裂く。鉄馬と一体になって。
鉄馬は、Eliminatorと呼ばれていた。
男はEliminatorにまたがり、
風を切り裂いていくのだった。
その瞬間、
男は何物にも変えがたいエクスタシーを感じることができる。
そして、そのエクスタシーは
Eliminatorとしかわかちあうことのできないもの。
男と Eliminatorの間には、
ヒトとマシンの関係を越えた絆が確かに存在したのだった・・・。
それほどまでに、強い結ばれ方だったはずなのに。
それほどまでに。
それほどまでに。
いつのころからだったか。
男は妻をめとり。
そして齢を重ね。
鉄馬を、Eliminatorを、忘れていった。
やがて Eliminatorは、カバーをかけられたまま、
長い眠りについた・・・。
男は疲れていた。
会社と家庭の往復。
妥協と後悔の連続。
工場のベルトコンベアのように流れていく毎日。
そんなとき。
男の内にあの記憶がふっとよみがえった。
それは断片的なものであったが。
確かにあのエクスタシーだった。
きっかけは、子供の頃に親しんだ、
バイクに乗った特撮ヒーローの姿を見た事。
ふと見ると。
カバーをかぶった Eliminatorが目に入った。
その姿は、悲しげであった。
男の内に小さな火が灯った。
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